「おやすみ、啓兄さん」
「おー」
閉め切った冷たいドアを背に、部屋から聞こえてくるふたりの会話に、はは、と乾いた笑いが口をついた。
優の安心しきった声色と、啓の甘くなった声色。布団が擦れる音。
きっといつものようにふたりで手を繋いで眠るんだろう。
この場にいる自分から遠目に見える自分の部屋の明かりのせいで疎外感が増しているような気がした。
世界から拒絶され、自分の居場所が見つからない、自分が惨めになっていくだけのような、そんな疎外感。
「…ずっと一緒だって、約束したじゃん、啓…」
きっと啓は忘れているであろう遠い遠い記憶の約束が口から零れて、それは震える吐息に混じって深夜の冷たい空気に溶けていった。
遠い約束 創啓 啓優 #208
(創視点です)
4/8/2025, 1:22:47 PM