春風とともに
春風に桜の花びらが運ばれて彼の髪に落ちた。少し傷んでいる派手な緑色の髪の上に薄いピンクの桜の花びらが乗っているのが春らしくてかわいい。
「…何?」
自分があまりにじっと見ているのを面白くなさそうに睨みつけてくる彼。コロコロ変わる派手な髪色、耳にはゴツゴツしたピアス、それに加えて目つきが鋭い彼は、あまりにも近寄りがたい見た目をしている。こうなる前のサラサラな黒髪の幼い姿を知っていなければ話さえまともにできなかったかもしれない。
「桜、ついてたのがかわいいなーって。」
優しく取ってあげると、面白くなさそうにぶすっとした顔をしながら「…ありがとう。」とお礼を言ってきた。かわいいとからかわれているのは不満だが、取ってくれたこと自体にはお礼を言ってしまう彼がかわいかった。彼の髪色が何度変わっても、ピアスの穴が増えても減っても、何度春が来ても、こんな風に桜を取ってあげるのは自分がいいなと思った。
3/30/2025, 10:46:20 AM