忘却者

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ただ一目見ただけだった。

突然、そう突然に。

私は恋に落ちてしまったのだ。

あの人は、全てが完璧だった。

性格も、成績も、顔も。

あの人は、不細工で、何もかもダメな私にも気軽に話しかけてくれた。

あの人は、私が誰かにいじめられていた時は、必ず助けてくれた。

あの人は、私の事が好きだと言ってくれた。

あの人は、私に勉強を教えてくれた。

あの人は、あの人は、あの子は……


そう、彼女は。

最近、私と話してくれることが少なくなった。

彼女は完璧でなければいけない。

私と一緒にいてはいけない。

だからだろうか?

(でも彼女は私の事が好きじゃない。)

そうだ。彼女は私のことが好きなのだから、私には彼女をどうするか決める権利があるんじゃないか?

「ねえ、なんで私を見てくれないの?」

「ねえ、私のことが好きなんでしょ?」

「ねえ、どうなの?」

彼女は私の事は友達として好きだった、ということを私に言った。

「ねえ、それがどうしたの?私の事が好きなのは変わりないでしょ?なら、同じじゃない。」

「ねえ、ねえ、ねえ……!!」

そこから少し記憶が抜けている。

気付いた時には、顔には大量の汗をかき、手には何かを強く掴んだような感触が残っていた。

気付いた時には、私は顔が青白くなり、頸にくっきりと赤黒い手形が残った彼女を抱いていた。

一体何があったんだろうか?

考える必要は無いな。これで彼女は私のものになったのだから。

私の恋物語はまだ続く。


お題「恋物語」






5/19/2024, 4:02:43 AM