9/19「時間よ止まれ」
肘に何かがぶつかった。嫌な予感が一瞬で駆け抜ける。振り向いた瞬間目に入ったのは、母が大切にしている15万円の花瓶が、傾いてテーブルから落ちていくところだった。
「ストーーーーーーップ!!!!」
思わず叫んだ。
―――宇宙の何らかの力は、それを聞き届けた。
床に落下する直前の花瓶がぴたりと止まる。
それに手を伸ばしていた少年もぴたりと止まる。
風にそよいでいたカーテンも、窓の外で鳴いていた鳥も、全てが止まっている。動くものは何もない。
15万円の花瓶のために、宇宙は全ての動きを止めた。―――永遠に。
(所要時間:7分)
9/19/2023, 1:37:00 PM