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【雪原の先へ】

屋根から垂れ下がったつららを、スコップで叩いて落とす。
「大きくなると落ちたとき危ないから」
父はアパートの廊下を移動しながら、順につららを落としていく。
3歳の僕は「自分もやってみたい」というようなことを言ったはずだ。力が足りないから、父が握るスコップに手を添える程度だったのだと思う。それでも、つららを叩くガンッという手応えが伝わってきた、ような気がする。

これは、僕が思い出せる限りで最古の記憶だ。幼い頃の記憶だから曖昧で、時系列上、本当に最古なのかは自信がないけれど。

産声を上げたときのことは全く記憶にない。そこからつらら落としの間の記憶も定かでない。だから、僕の人生は、実質、このつらら落としから始まったのだ。

父が紐でソリを引く。僕はソリに乗っていただろうか。あるいは、ソリに載っていたのは落としたつららだったろうか。

雪の降り積もった道を、父と進んだ。

12/9/2025, 1:10:51 AM