シシー

Open App

 私は可愛いものや綺麗なものが大好きだ。
特に化粧品やアクセサリーなんかがお気に入りだ。丁寧に飾りつけられ、照明の光をうけてキラキラと輝くからまるで宝石箱の中にいるようでワクワクする。
 買い物に行くといつも目的のものを買う時間より、ショーウィンドウを眺めたり店内の商品やレイアウトに癒やされる時間の方が圧倒的に長いくらいだ。買いもしないのに見物するのは失礼だと分かっているけどやめられない。
私は可愛いものや綺麗なものをみるだけでいいの。買ったり身につけたりするのはそれらを汚してしまうだけだからみているだけでいい。

 おしゃれをすることや流行りにのることにはもはや諦めている。私に優れた容姿や抜群のスタイルがあったのなら全力で着飾ってみたいなとは思う。だが、現実はどこにでもいるような印象の薄い容姿と寸胴で肩や胸がゴツい体型が邪魔をしてとてもじゃないが着飾る気などおきない。
一応ダイエットしたり美容に気をつかったこともあった。だが、どう足掻いても見劣りしてしまって眺めるだけに落ち着いたのだ。

 ただ、やっぱり憧れというものはいつまでも消えてはくれない。いつかあのキラキラを自信をもって堂々と身に着けてみたいという気持ちは心の隅っこに残り続けた。


 以前、衝動のままにバッチリメイクをしてお気に入りの服やアクセサリーで着飾ったことがあった。

 「スッピンのほうがいい」
 「いつもの服の方が似合ってる」
 「そんなピアスつけるなんて意外だった」
 「なんか派手すぎでしょ」
 「胸大きいの自慢してるのかと思った」

 案の定というか、周りからの反応はかなり冷ややかだった。私自身のことも、身につけているものたちも、まるで汚物をみるかのような視線と言葉を浴びた。そのときから私は着飾ることはやめて平凡であるための努力をするようにした。

 すごく悲しかった。私が身に着けることで大好きなものたちの評価を下げてしまったことが本当に悲しかった。
自分のことなら何を言われても構わないが、好きなものを嘲笑われるのは許せない。
 似合わない私が悪い。だからもう何も見ないで、言わないで。これ以上汚さないでよ。





 好きなものを身に着けて着飾りたくなったときは、一人で鏡の前でファッションショーをする。
好きなものを嘲笑われないように、お気に入りのものを汚さないようにしたい。こんなにも大切な宝物たちが私のせいで価値が下がるなんて絶対に嫌だ。

 だから、着飾るときは一人でいたい。

 誰にも見られないようにひっそりと。
人知れず行われるファッションショーは思いきり楽しむの。
評価も価値もぜんぶ自分で決められる特別な時間だよ。
 

 宝物たちも、私自身も、
 傷つかないことはとても幸せでしょう?



           【題:だから、一人でいたい。】

7/31/2023, 3:53:02 PM