124

Open App

まだ余裕はあるのに、「人が多いから」なんていくらでも反論できる理由をつけてバスを1本乗り過ごしてみたり。
隣のクラスに行けばいいものを「仲いい子多いから」なんて雑すぎる言い訳を述べてわざわざ離れたクラスに忘れ物を借りに行ったり。
正論だけじゃ回らなくなってきた生活に、認めざるを得なくなってきて、それが秋の恋だなんて思ってみたり。
それを楽しかったと思えるのはもう少し大人になった時だろう、と目を細める母も、秋の恋に縋ったことがあるのだろうか。
合理に全く歯が立たなくて、ようやくできる抵抗が無理な言い訳をつけることだけだった秋の恋に。
色付いた木々が、理屈も理論も捨てしまいなさいな、カラカラ笑ってそう言って。
少しだけ素直に「会いたい」と口にしてみれば、ゆっくり回り始めた歯車。
それに便乗して、どうやら空も巡り始めたみたい。

10/9/2025, 3:46:54 PM