貴方は泣かない。強いから、少なくとも私の前では。私が信用されないとかされてるとか、そんな話じゃなくて。あの子は無自覚に扉を閉めてしまう。透明で誰にも見れない。本人でも。
河原に行こうって誘ったのは私。伝えたいことがあったから。ロマンチストな雰囲気に身を任せたかったから。
…貴方、彼氏と別れたんだったよね。そりゃあ夕日が似合うわけだよ。
ふわりと生ぬるい風が髪を揺らす。長い貴方の髪は波となり、黄昏に溶け込んだ。綺麗だ。このまま時間を止めてしまいたい。…でもそうしたら想いは届かない。でも、それで良いかもって。ちょっと怯えてる、貴方の言葉を恐れる自分がいる。
なかなか話を切り出せない。貴方は私が話し出すのをゆっくり待ってくれてる。私たちは黙って夕日を見つめた。
綺麗な横顔。いや、正面も綺麗だよ?アホ毛の先っちょから爪先のテッペンまで全てを愛せる自信しかない。だから、さぁ、あの〜…私にしちゃいなよ。貴方を1番理解して、大切に思ってるから。今までの相手のことなんて幸せ過ぎて忘れさせちゃうよ!
…なんて言えるはずはない。そもそも私は張り合えてもいないだろうし。…何で呼び出しちゃったんだろう。今さら後悔してるよ…。
どうしよう…なんて思っていると貴方が口を開いた。
「私も話したいことあってさ。相談、いいかな?別れた彼から寄りを戻そうって言われてるの。相談乗ってくれよ〜私の大大大親友〜!」
…そっか。そうだよね。親友、それだよね。あの男ね?あーね。あ〜…うん。……うん。
分かってたよ。分かってたじゃん。あ、なんか言わないと、返事、動け、。
「あの人ね。そうなんだ〜!いいんじゃない?いい人そうだったし。」
「…振ったのって向こうから?いや違うか。こっちからか!」
「寄りを戻すのか〜。まさかアンタがそんなこと言い出すなんてね〜。別れたときはもう、浴びるほど飲んでさ。愚痴を聞く身にもなってよね〜。はは、ははは………。」
思わず口をつぐんでしまう。どうしてよ。どうしてそんな悲しい顔をするの。私だってしたいよ。伝えてもいいの?この想い。貴方は受け止めてくれーーーーーー。
「…ねえ。あんたと同じ、気持ち、だから。あんたはどうなのよ。言葉にしてよ。アタシが気づかないとでも思ってた?気づいとるわ!言葉で伝えてよ。安心させてよ!あんな男より私のほうがいいでしょう?って言ってよ!待ってたのに!呼び出されたとき、嬉しくて!こんなにオシャレしてきたのにさ!気づいてよ!この鈍感め!馬鹿!アホ!意気地なし!」
声を上げて泣く彼女。メイクが取れて顔がぐじゃぐじゃ。…気づいてなかった。オシャレなんて。緊張でそれどころじゃなかったんだから。
「好きです。付き合って下さい。」
彼女の手を取り、真っ直ぐ目を見つめる。
「そんなの勿論以外にあるわけないじゃんか〜!!!」
そう言ってわんわん泣いてる。そんな姿も愛らしくてしょうがない。夕日に照らされて夕日よりも輝く涙。どんな宝石よりも美しくて、どんな画伯でも描き表せない。
そっと背中に手を添る。…視界がぼやけてきた。頬につうと涙がつだい、やがて増えて止まらなくなった。
ありがとう。大好き。そんな思いでいっぱいで2人で枯れるまで泣いて、笑った。これからよろしくねって。
11/4/2024, 12:25:35 PM