それは、小学校を卒業した直後のことだった
まだ赤ちゃんの頃に両親を亡くした私を引き取った、母方の伯母さん夫婦が、私への手紙を隠していた
その隠された手紙は魔法界の学校への招待状で、伯母さん夫婦は私が遠くに行ってしまうのが悲しかったから隠していたそうだ
けど、迎えが来た日、覚悟を決めて手紙のことを明かしたという
どうやらドッキリではないらしい
そんなこんなで、私は魔法界の学校へ通うことになった
学校の先生に連れられて、山手線の池袋駅から、人間界とは位相のずれた世界へと入る
漫画とかで位相のずれた空間とか聞いた気がするけど、よくはわからない
入ったそこは、人の少ないただの池袋駅だった
「私のお母さんやお父さん、闇の帝王に殺されたりしたんですか?」
歩きながら聞くと、先生は訝しげな顔をした
「いや、事故に巻き込まれてしまったって聞いたよ?」
あ、そうなんだ
まあ、たしかに私の額は傷ひとつないな
「先に言っておくけど、あまり魔法界や学校の授業に期待しすぎないようにね」
どういう意味だろう?
「たぶん、魔法の杖で炎出したり、グリフォンと触れ合ったりとか想像してると思うけど、そんなのないから」
ん?無いの?
「あの
城で勉強したり、箒に乗ってスポーツしたりとかはあるんですか?」
「あー、まあ、それ期待するよね
割と普通の建物で普通に勉強するよ
それと、現代ではあんまり箒には乗らないなあ
公道では違法だしね
あとは、見ればわかるよ」
公道って言った?この先生
すごく嫌な予感がした
池袋駅を出ると、ある意味驚きの光景が広がっていた
整備された道、ガードレール、ビル群
大通りを走る車、スマホをいじる人、自転車で走る人
超見慣れた光景
は?
「言いたいことはわかるよ
でも聞いて
人間界に、高度に発達した科学は魔法と変わらないって言葉、あるでしょ?
知ってる?」
「聞いたことはあります」
「高度に発達した魔法はね、科学と変わらないんだよ、ごめんね
あと、魔法の杖は杖ロッド法違反になるから、警察や猟師とか、許可された人しか持てない
アメリカは杖社会だから一般人も持ってるけど」
うわあ、現実味のある言葉の数々
今までとほぼ何も変わらない
私の来た意味は?
「魔法使いはね、人間界にずっといると、魔力が枯渇して体調不良や魔力障害が起きるから、君くらいの年齢までに魔法界に来ないと、下手すると命に関わるんだよ」
ああ、命に関わるようなちゃんとした理由で連れてきたのかあ
「がっかりするよね、でも世の中、そんなものだから」
まあ、全然違う環境に入れられるよりはいいのかもね
聞いたら、人間界の本やゲームとか、魔法界にしかない本やゲームとか、色々あるみたいだし
なんか、ネットも人間界のアプリやページが見られるってさ
「人間界に里帰りとかってできますか?」
「ああ、それは大丈夫
十年単位で長くいなければ、しばらく人間界でも生活できるよ
夏休みとか、人間界で育った子はたいてい里帰りしてるし」
よかった
じゃあ、いっか
正直、ボッチで友達はいなかったから、そのあたりの未練はないけど、伯母さんたちには会いたいから
それにしても、ちょっと残念ではあるなあ
ファンタジー感あふれる世界を想像してたからなあ
ちなみに、私が通う学校、市立第二中学校だってさ
2/2/2025, 11:00:34 AM