『約束』
定時に仕事を終え、駅までの道を歩く。まだ明るさのあるこの時間、ただ真っ直ぐ家に帰るだけでは何だか勿体ない。が、だからと言って行きたい所がある訳でも無い。気持ちを持て余したまま自分のとった行動は、右に折れていつもの東改札には向かわず、駅前広場をぐるり半周して西改札に来ただけだった。
何してんだろう…。
何の意味もない行動に我ながら呆れる。
すると突然、後ろから声が掛かった。
「遅くなってごめんね!それにわざわざ西改札まで来て貰って…。どうもありがとう」
振り返ると先月、偶然駅で会った友人が立っていた。
『久しぶりだね。今度一緒に食事に行こうよ。3月5日の午後6時、駅の西改札前に集合ね』
そう言って別れ、今日がその約束の日だと今気が付いた。
……あ、だ、大丈夫。私も今来たばかりだから。
何処に行こうかとふたりで歩き出す。友人の話しに笑顔で相槌を打ちながら、頭の中は自分のとった不思議な行動に大パニックをおこしていた。
3/5/2025, 9:31:04 AM