ゆかぽんたす

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あの子はいつも僕に優しい。だから絶対に僕に気があるんだ。そんなこととっくに気づいてるよ。なのに、いくら待ってもあの子は僕に告白しようとしてこない。チャンスをあげようと思って、「今日一緒に帰る?」って誘っても友達と帰るからいいと断ってきた。なんだそれ。僕のこと好きなんだろ?だったらできるだけ僕のそばにいたらいいじゃないか。なのに君は涼しい顔して僕の誘いを受け流す。どういうつもりなんだよ。僕のこと本当に好きなの?
だから今日、あの子の後をつけてみた。彼女が言ってた“友達”なる子達と校門を出るところだった。多分、同じクラスの女子。何かを楽しそうに話していて、みんなでいきなり爆笑したりよく分からない歌を歌いだしたり。僕に見せるあの笑顔をそのままみんなにも振りまいている。つまり、あの子は僕だけじゃなくてみんなにも同じように優しいというわけだ。
これが女子の友達になら納得がいったと思う。けど僕は信じられないものを見てしまった。どこから現れたのか、女子グループに合流してきた男子にまであの子は笑いかけている。ソイツがわけ分かんないことを言って飛び跳ねるのを見て、彼女は全力で笑っている。目じりには涙を浮かべるくらいに爆笑している。そんな顔見たことなかった。なんだかいつもよりいきいきしている。嘘だろ、と思った。
僕に優しいから僕のことが好き。
そんなわけがなかった。あの子はみんなに優しい。そして、みんなのことが好き。男にも女にも、分け隔てなく接する彼女は、僕のものじゃないんだ。
くやしい。彼女の優しさを好きの気持ちだと勘違いしてたことが恥ずかしい。チクショウ、と呟いて彼女の尾行をやめた。踵を返す僕の背にまた、彼女らの楽しげな笑い声が降ってきた。

1/28/2024, 8:32:28 AM