あたたかいね、と
ココアのマグをくるむように持つ
君がほう、と息を吐いて
そして微笑む
僕はその向かいで
コーヒーを飲みながら
そうだね、と返す
しあわせだね、と
冬の星空を見て
君が言った
そうだね、と
コーヒーの水面に目を落として
僕は返した
星くずのように美しくて、
氷精の舞ように寒くて、
心に火を灯すようにあたたかな夜だった
たぶん、
君は気づいていないだろう
僕は別にコーヒーが好きなわけじゃないし
ココアなんかは甘くて苦手だ
幸せになんかなれないと
重い体を引き摺って
今日まで生きてきた
ほんとうはね、
微笑む君が、君がいるから
僕の体はあたたかいんだ
僕にもたれながら
鼻歌を歌う君がいるから
僕の心はこんなにも満たされている
とりとめのない話をする君
僕の面白くもない話を
一喜一憂して聞いてくれる君
どうしようもなく寒い夜、
共に毛布にくるまって
「あたたかいね」
と囁く君
夕暮れの空の下
振り返って僕を呼ぶ君
僕の心にあたたかな火を灯す
君がいるから、
僕は幸せなんだ
ぬくもりを惜しみなく与えてくれた君に
溢れんばかりの幸福があるように
しあわせを教えてくれた君が
寒さに震える日がけして訪れないように
そう願っている
そばにいられることの
儚さを知っているから
いつかその時がきたとしても
君には幸せだけがあって欲しいから
ずっとそう、願っている
「あたたかいね」
1/11/2025, 3:20:23 PM