川柳えむ

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 薄ぼんやりとした、白んだ視界の中、誰かが手招きをしている。
 あー行かなきゃと思って、そちらへと歩き出す。
「やめときー」
 誰かの声が響いた。手招きが止まった。
 途端に、視界が黒くなる。
 誰かの舌打ちが聞こえて、はっと目が覚めた。

 やばい。死にかけてた。
 エアコンが壊れた部屋の中、暑さに気を失っていた。
 やっぱり扇風機と風鈴なんかじゃ、この暑さは誤魔化せない。
 慌てて冷蔵庫にあったスポーツドリンクを飲み、少し意識がはっきりしたところで、ふらつきながらも近くにある街の図書館まで逃げ出した。
 駄目だ。熱中症怖い。危険。命の危機。
 急いでエアコン修理の電話を掛ける。
 こうして、なんとか死を免れた。次からは気を付けようと心に誓った。


『真昼の夢』

7/16/2025, 10:59:21 AM