青藍

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 やけに空が綺麗だな、そう思った。何時もは下を向いてばかりだから気づいていなかったのか、そう考えて少し惜しいことをしたなと思った。
 そういえば中学の頃だったか、天気について学んだことがある。雲が空の九割を占めていたら曇り、八割から二割が晴れ、一割から零だったら快晴だそうだ。…こういう対した知識じゃないものほど記憶に定着しているのは何故だろうか。他の授業内容だなんて微塵も思い出せやしないのに。
 はは、と声を零す。そういえば昔は天気に関心があったなと。夢という程でもないが、夢と言った方が響きは良いだろうか。ただ漠然とした未来像に当時は酔っていた。なれるわけもないのに、馬鹿馬鹿しい。
(でも、あの頃は幸せだった)
 ただひたすらに走り続けて、それで良かった。だが、一度立ち止まってしまったら、もう進む気力が無くて、掻き集めた気力でさえ掌から砂時計のようにサラサラと零れ落ちて、そうしたらゴールが見えない未来に怖さを覚えて何時の間にかなんのために生きているのかわからなくなってしまった。
(昔の自分に言ってやりたいな、この景色を見るためだって)
 夏の朝六時。雲一つない青空。そんな景色を見たら曇っていた心も今や快晴だ。
(ああ、キレイだな)
 そして走馬灯はやけに長かった。最後にそんなことを思いながらグシャリという嫌な音で意識は途切れた。

【題:快晴】

4/13/2024, 1:41:19 PM