かたいなか

Open App

素足のままでビーチに出たら、素で足の裏を低温やけどしてしまいそうな気温が続く東京です。
都内某所の某不思議な稲荷神社を舞台に、素足のおはなしをご用意しました。

おはなしの舞台の稲荷神社は、本物の稲荷狐が住まう、不思議な不思議な稲荷神社。
この神社には東京と、「世界線管理局」という外の世界の大規模組織とを繋ぐゲートがありまして、
このたび、諸事情でちょっと不通しておったこのゲートが、ようやく修復されたのでした。

「はぁぃ、こんにちは、こんにちはー」
修復されたゲートの最終チェックとして、
管理局側の黒穴を通って、管理局の局員が稲荷神社にやって来ました。
「んんー、問題なーし!長かったよぉー」
「セットアップ、結局1日かかったもんねー」
「えーと、最終チェックの確認済み認定ステッカー、どこやったっけ。付けなきゃ」
「それ去年から廃止ぃ」

てくてくてく、とたとたとた。
同じ顔の可愛らしい、5体の魂人形が、素足のままで管理局側の黒穴から、稲荷神社に入ってきます。
「やだー!忘れてたぁ、そうだよ、あたしたち、素足のまんまで来ちゃったよぉ!」
「気にしなぁい」
「気にしなーい」

「確認すること確認して、設置するもの設置して、
美味しいもの買って持って帰って撤収ぅ!」
「「賛成〜」」

えっさっさ、ほいさっさ。
素足のままで管理局から出張してきてしまった人形たちは、稲荷神社の黒穴の前で、
機器を設置したり、しめ縄を設置したり、自分たちが為すべき仕事を為して、
そして、稲荷狐のお母さんに、作業完了の報告を、

「わぁー、寝坊しちゃったぁ!ごめぇーん!」
作業完了の報告を為す直前に、管理局側の黒穴から、5体の魂人形とそっくりな、だけどちょっとだけ背丈の大きい女性が、
ぽぉん!稲荷神社側に、急いで入ってきました。
「あぅ、設置、終わっちゃってるー」

この女性こそ、魂人形の持ち主。
5体の素足のままの人形は、この女性、ドワーフホトの代わりに、せっせこ仕事を為したのでした。

それを影で見ておったのが稲荷狐のお父さん。
「あの人形良いなぁ」
お父さん狐は都内の病院に勤める漢方医。
自分の代わりにちまちま仕事をしてくれる魂人形が5体、いや6体も居れば、
お父さん狐の残業も、激務も、診療も、
全部ぜんぶ、ぜーんぶ、楽になる気がしたのです。
「良いなぁ……」

稲荷狐の秘術でもって、あの魂人形に似たようなことは、なんとかできないものかしら。
深夜勤の病院勤務から帰ってきたお父さん狐は、
ドワーフホトと5体の魂人形を、
じっと、じぃーっと、観察しておったのでした。

私もああいう人形を、5個か6個作ったら、
どれだけ楽になれるだろう!
稲荷狐のお父さん、さっそく管理局のドワーフホトに、魂人形の仕組みを聞きにゆきました。

「ドワーフホトさん、ドワーフホトさん」
「なーに、コンちゃんのお父さぁん」

「あの人形は、どうやって作られたのですか」
「うーんとね、えーっとね、
スフィちゃんが作ってくれたから知らなぁい」
「少しで良いんです、ヒントを」
「スフィちゃんに、聞いてくださぁぃ」

「『スフィちゃん』、」
「ミカンが大好きだから、ミカンの果実酒とかミカンのお菓子とか、持ってくと喜ぶぅ」
「なるほど ありがとうございます」

コンちゃん、コンちゃーん、ゲート直ったよぉ。
稲荷狐のお父さんと離れて、ドワーフホトとその子機たる魂人形は、素足のままでぺたぺた。
美味大好き仲間の稲荷子狐を探して、稲荷狐の自宅件宿坊の、奥の奥に入ってゆきました。
「ミカンか」
お父さん狐は、ドワーフホトの後を追いません。
ミカンのお酒とミカンのスイーツを、さっそく探しにゆくのです。
「うーん、ミカン……」

多忙な漢方医の仕事量を減らすため、
膨大な漢方医の仕事量を分散するため、
お父さん狐は素足の魂人形の、秘密を教えてもらいに行ってきます。

そこから先は、お題とは無縁。詳細は書きません。
ただ、このおはなしから2〜3日後、
稲荷狐のお父さんは、教えてもらった魂人形の秘密と、自前の稲荷狐の秘術とをかけ合わせて、
ちくちく、ちくちく。
自分の仕事を手伝ってくれる稲荷狐のぬいぐるみを、コンコン5体、頑張って作っておったとさ。
おしまい、おしまい。

8/27/2025, 3:21:36 AM