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『七色』

❝初めてその人を見た時、全身が七色に光って見えた。

誇張や比喩ではなく、本当にそう見えたのだ。
別に私は、音や言葉に色彩を感じる共感覚の持ち主ではない。

他の人達は普通に光りもせず、色もついていない。
なのにその人だけ、浮かび上がるように七色なのだ。

いつもの私なら、不思議なこともあるものだとそのまま素通りしたと思う。
けれどその時は、その不思議な人を追いかけてみようと思ってしまった。

今ならきっと、そんなことはしない。

追いかけ、観察した結果、私は引き返せないところまできてしまった。
全身が七色のその人の、顔だけが見えないことにもっと注意を払うべきだった。

過去の私に言ってやりたい。
好奇心は猫を殺すのだと。❞


――部屋に残された手記はここで途切れている。

3/27/2025, 9:59:04 AM