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梅雨


「もう、やだぁ」
目覚まし時計のアラームが鳴る中、彼女は布団にもぐり込みながら、そう言って出てこなかった。
決して朝が苦手だとか、そういうものでないのはよく知っていたし、いつもならいの一番に起きて、こちらを起こしてくれるのだ。ただし、この時期を除いては、だ。
雨が多くなるこの時期は、元気で活発な彼女から少し不機嫌な彼女へと変わる。
雨のせいで髪が広がってまとまらない、と。何だか頭がズキズキと痛む、と。雨の暗い雰囲気につられて、気分まで落ち込む、と。
そのせいでこの時期の彼女はちょっとだけ不機嫌で、それでいて可愛らしかった。
いつもとは違う、少し弱った彼女の姿が見れるのは不謹慎かもしれないけれど、少し嬉しくて、いっぱい甘やかしてあげたくなるのだ。
だから、だろう。君が嫌いだと言うこの時期を、僕が嫌いにはなれないのは。

6/1/2023, 1:53:26 PM