past love story by Lily

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蝋燭の灯りで周りより一際明るいテーブルにエスコートされ

ウエイターが去る前に
手慣れたように料理やドリンクを頼む

ここは料理出てくるの、おそいから
とニコニコしながらあなたはわたしに話す

間接照明やネオンサインで彩られたホールは
グランドピアノがごく自然に配置され

今まで何千、何万人も迎え入れたであろう
品の良い木製のテーブルや椅子、ステージは

ジャズやR&Bを染み込ませたようで
年季の入ったホールによく似合った

演奏が始まるまで、
平日だというのに活気のある店内は
ウエイターも客も往来が激しい

となりのテーブルの若い男衆3人組が
話しながら店内をキョロキョロしている

わたしと同じで初めてくるのかなと
横目で眺めているとあなたが

いつも持ってるトランプカードを取り出して
ゲームをしようと言ってきた

絵柄のあるカードをシャッフルして
1枚をテーブルに置いて
そのカードに手をかざして
赤か黒か 色を当てるというもの

ハートやダイヤは、かざした手が
温かく感じると言って
あなたはテーブルに置かれたカードの色を
見事に当てた

わたしもそれに続いて次のカードに
手をかざすのだけれど
わかるような、わかんないような

わたしたちはドリンクがきた後も
くすくす笑いながら

演奏が始まるまで お互いの手を触って
赤か黒か どうしたらわかるのか

テーブルの灯りに照らされながら
指南してもらっていた



◇キャンドル◇

11/20/2023, 12:06:12 PM