僕の足元には
数々の球が転がっていた
それは思い出したくもない記憶で
視界の端にも入れたくはないのに
少しでも目に入ったならば
たちまち僕を支配して
まるでドミノのように
連鎖的に蘇ってきて
僕は動けなくなる
嗚咽を漏らして蹲り
黒い底へと沈んでいった
誰かこの気持ちを分かってくれと叫んだ
完全な理解など無いと認めることに恐怖した
君でさえ全てを理解する事はないのだと
認めることが酷く虚しかった
君は確かに同情などしなかった
ただ君は僕の足元の球を
不意に拾い上げたと思えば
全力で遠くへ投げてしまったので
僕は呆気に取られた
何をするんだと君に詰め寄ると
「これでもう見なくて済む」と
なんでもない様子で君は言った
僕はそんなものかと脱力した
何故か笑いが込み上げてきた
足元にはもう何も残っていなかった
僕は思う
同情だけが優しさではないのだと
2/20/2023, 5:09:35 PM