"台風が過ぎ去って"
子供の頃、里帰りだといって矢鱈と来客が増えるお盆の時期が嫌いだった。
祖父母の兄弟達はまだいい。
その子供もそれなりの年齢だ。
問題は、さらにその子供達、僕にとっては再従兄弟にあたる彼らだった。
まぁ、よく笑ってよく泣く、世間一般でイメージされる子供らしい子供だったと思う。
おおきいのは親御さんから色々言い含められているのか遠巻きにこちらを見るだけだったから問題ない。
だけど、ちいさいのは遠慮も手加減も知らずに遊べ構えと毎回寄ってきた。
本能の命ずるまま食糧を貪って、暴れて、走り回って泣き叫んで。
凄いよなぁ、自分が世界の中心だと信じて疑わないんだから。
でもまぁ、人間だって動物だもんな。
言葉の通じない動物の世話をしていると思えば、纏わり付かれるのもうるさいのも仕方無いと受け流すことができた。
だけど、お盆明け。最後までバタバタしていた彼らが帰った後。
騒がしい台風が過ぎ去って、荒れ果てた家の中を掃除するのは面倒だったし。
なにより。
はしゃぎ回る子供達を、眩しいものでも見るようにして見ていた祖父母の。
疲れた、ようやく帰った、と言いながらもどこか寂しそうな顔を見るのが、嫌いだった。
僕があの子達みたいな子供らしい子供だったら、
きっと祖父母は嬉しかっただろうなと思う。
でも、あんな風にはなれなかった。
あんな風に自由に振る舞う方法なんか知らなかったし、結局のところ、僕は祖父母から彼女を奪った仇でしかなかったから。
9/13/2025, 7:14:37 AM