hashiba

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二度寝から目を覚ませば既に昼前、隣の人は未だ夢の中。昨夜は残業で遅くに帰ってきて、倒れ込むように寝ていた。カーテンを閉めたままの薄暗いなか、何となく寝顔を観察してみる。整った顔立ちをしているが、目元口元には年相応に皺もある。この人も普通の社会人なのだ。いつも子供のように笑ったり泣いたりするから、そういうことも普段は忘れてしまっている。戯れに目尻をそっと撫でると、もぞもぞと身を捩って目を開けた。自分を見とめると嬉しそうに微笑んで、おはよう、と言う。若い頃はさぞモテただろうに、歳を食ってからできた恋人に対して素直で無邪気。そんな姿を見るたび、心がぐしゃぐしゃに乱れて仕方なかった。昼食を用意しようと部屋を出れば、起き上がって裾を掴んでついてくる。本当に、この人は。今日一日家の中に閉じ込めて、恋人としての姿を独占しても許されるだろうか。


(題:無垢)

6/1/2024, 9:53:30 AM