『枯葉』
「あ、そこで停めてください」
昨日からの急な出張もなんとか明るいうちに新幹線で戻るコトができたので、会社に顔を出すコトにした。
一緒に出張に行った同期がタクシーの運転手に声をかける。
会社の前でタクシーを降りたのだけど、悪天候でかなりの強風のため小雨のはずが横殴りの雨になっている。
玄関までたった数メートルなのに、傘も持っていないし、ずぶ濡れになりそうでガックリする。
玄関の自動ドアが開く。
ロビーを横切って歩いてきていたスーツ姿の男が、コチラの姿を見ると小走りで向かってきた。
「お? お前のお迎えだな。うらやましい限りだよ」
「なっ、、、」
コイツ、知ってる、、、?
「アイツ、隠してるつもりが隠しきれてねーぞ。コッチが心配になるわ、、、」
同期は呆れた顔をする。
「おかえりなさい」
目の前に到着したアイツが声をかけてきた瞬間。
半分閉まっていた自動ドアの空いた隙間から突風が吹き込んだ。
「うわっっ!!」
ビックリした声を出して、目をギュッと閉じたアイツの頭が乱れて、柔らかい髪の毛に外から風と共に入りこんだ枯葉がくっついた。
しかも、3枚も、、、。
「ブッ!!なんだよ、その頭!!」
同期が吹き出した。
ツボに入ったらしい。
「え?え?なんですか?」
訳がわからないという顔をするアイツに少し笑って声をかけた。
「枯葉くっついてる。取ってやるから頭コッチ向けて。夏目」
2/20/2024, 9:17:27 AM