私を名前で呼ぶ人はあまりいない。
大半の人は私を名前では無く肩書きで呼ぶ。
そうしてだんだん自分の名前が遠くなって、肩書き以外のものが消えていって、私の自我が閉ざされていく。
肩書きが無くなったら私はどうなってしまうのだろう。肩書きの無い私を人はなんて呼ぶのだろう。
私の名前は·····何だったろう?
肩書きだけになってしまった私は、顔も髪も体も声ももう自分では思い出せない。
「×××××様」
――誰?
「×××××様」
――それは誰?
「もちろんあなたのことです。×××××様」
――あぁ、そうだ。それは私の名前。
この世界でただ一人、私を名前で呼ぶ人。
「久しぶりですね。※※※※※※」
あなたはきっと、知らないのでしょう。
年下の君の名前を呼んだあの日。
私は私を取り戻したのです。
END
「君の名前を呼んだ日」
5/26/2025, 3:14:31 PM