『名前がなければ』
色のある世界とはどんなものだろうか。
私が産まれた時には、既に色は消え去った後だった。もっと正確に言えば、色の名前が存在しなかった。それどころか、つい最近まで“色”という言葉自体さえ、誰一人として知らなかった。
一体誰がこれを“色”と名付けたのか。
「空にはどんな名前の色が合うんだろう」
日が落ちると暗くなり、朝とは明らかに違う雰囲気になる。
毎日同じような感じだけれど、毎日違うような気もしている。
明るいか暗いか。他にも名前はあるはずなのに、名前がわからないが故に“色”の存在を認識できずにいることが悔しかった。
色がある私の知らない世界に、今日も夢見て空を眺める。
4/18/2024, 5:17:31 PM