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春爛漫(オリジナル)

満開の桜。
麗らかな陽気。
桜を愛でる人々。
春。
私は公園を歩いていた。
すると、突然、
「そこなお嬢さん」
と声がした。
私の事かと訝しく思いながら振り向くと、黒いロングコートを身体に巻き付け、短い髪を頭頂部で結んだ、赤ら顔のおじさんが立っていた。
私が足早に去ろうとすると、慌てた様子で、
「あいや待たれよ」
などと言う。
「私は春を呼ぶ魔法使いである」
完全に頭のおかしい人である。
けれど、ちょっと面白くなって立ち止まってしまった。
それに気を良くした彼は、鼻息荒く、
「とくとごろうじろ!」
バサリとマントを開いた。
突風が吹き、周囲の桜が一斉に花びらを散らす。
一瞬、本当に何かの魔法かと思ったくらいだ。
けれど、すでに咲いている花を散らしただけでは春を呼んだと言わないのでは?
私は突風と舞い散る花びらに目を開けていることができなかったが、風が止んだので目を開けた。
目の前の男は、両手を大きく開き、大の字で黒いマントを背中に広げ、その下の裸体を晒していた。
「その名も、春⭐︎爛⭐︎漫⭐︎」
喜びで、顔がキラキラしていた。
(春だなぁ)
女装男子の私はにっこり微笑み、警察に通報したのだった。

4/10/2026, 11:18:32 AM