誰よりも強いと言われた男は、私達が気付かなかった·····あるいは見て見ぬふりをした女の涙に、ただ一人気付いた男でもあった。
涙を拭うその指に、恋をするなという方が無理な話だろう。女はそうして、堕ちていった。
誰よりも弱いと思われていたあのひとの、隠された強さに私は惹かれていたのです。
人知れず涙を流しながら、それでも友の為に耐え続けたあのひとの、張り詰めた糸のような靱やかさに、私は恋をしたのです。
誰よりも強いと言われた男と、誰よりも弱いと思われていた女。
本当に強かったのは、本当に弱かったのは果たしてどちらだったのだろう?
END
「誰よりも」
2/16/2024, 3:25:44 PM