「そこまでです」
冷ややかな幼い声が聞こえた。こちらをみているのは、わたしと同じくらいの年頃の女の子だ。
わたしは、右手の剣をその女に構えた。
「やめとけよ、あんた」
少年。左手の剣を突きつける。
わたしはスカートのポケットに入れた聖なる薬草を意識した。これだけは持って帰る。友だちの命が助かるのだ。
「落ちていくつもりですか? この森は立ち入り禁止です」
「わかってる」
鋭いナイフを投げつけるように言った。
「あんたら貴族のための、薬草があるから」
男の片方の眉が上がった。女の方は、冷ややかな顔のままだった。
「死ぬつもり」
女が言った。
「まさか。それはあなたたちじゃない?」
シャラン、と金属音がして、女が剣を抜いた。男もだ。
わたしは、踏み込んだ!! 右手の剣は、女の腕を掠った。浅い。女は間髪を入れず横薙ぎに剣を閃かせた。それを両手の剣で受けると今度は男が武器を振りかぶるのが視界に見えた。わたしは、勢いよくその相手にタックルをした。体重は重くないけど、その構えを崩すことに成功し、相手は二歩下がった。
「あなた、何者?」
「ただの、貧民街の虫ケラよ」
さっと、踵を返して走った。向こうは鎧を着ている。軽装だから、逃げ切れるはず。わたしは、友だちの顔を思い出していた。かならず、助けるよ。
こうして、革命の騎士たち、二刀のセラと聖騎士ミューネ、剣聖ハリオは、最初の邂逅を果たしたが、彼女たちの名が歴史に出てくるのはもう少し後のことだ。
11/23/2024, 4:52:45 PM