男子高校生の多感な時期に、俺は誰にも言えない秘密を持ってしまった。
別に、誰かを殺した訳でも、ヤバいくすりを始めた訳でもない。
なら言ってもいいと思えるが……
俺は全身鏡の前に立つ。
「うーん! 可愛い、俺!!」
俺はフリフリの淡いピンクのメイド服を着ている。ウィッグをつけて茶髪のツインテール姿。頑張ってメイクもしてみた。
ちょっと輪郭がゴツいところを除けば、どこからどうみても可愛い女の子だ。
そう、俺の誰にも言えない秘密は、女装。
好きな人は女の子で彼女もいる。でも、自分が綺麗で可愛くなることは快感である。
でも、それを人に言えば、白い目で見られる。それは、彼女やお母さんでも。だから誰にも言えない。
よく警察の特番で、女装をして夜道を歩くおじさんの映像とかを見ると、俺の将来とかもそうなってしまうのかな、と、自分でも心配になる。
現実に戻ると、俺はため息をついた。
でも、鏡に映る今の俺は、明らかに可愛い。
誰にも言えない秘密。今はまだ、わかってほしいとは思わない俺だけの娯楽である。
【誰にも言えない秘密】
6/5/2023, 11:32:13 AM