冬華(トウカ)

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日中の騒々しさが嘘のように消える
時刻は午前2時30分
車は一台も通らず、人一人すらもいない
夜だと言うのに、過剰なほどに置かれた街灯によって昼間のように明るい
上を見上げても、視界に入るのはビルのてっぺんとその隙間の空
星も月も見えない

僕が歩くと、足音が響く
こつ、こつ、こつ、石畳に踵を打ちつけて進む

今もどこかで、騒々しい世界で生きている人はいるけれど、僕は今、静寂の中心で歩いている
それがなんだか不思議でくすぐったい

静寂の中心で生きる人々は、また騒々しい日々に飲み込まれていくだろう
騒々しい日々にもみくちゃにされた人々は、静寂の中心へ向かっていく

その、繰り返し

10/8/2025, 6:40:36 AM