白糸馨月

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お題『どこまでも続く青い空』

 世界は雲に覆われてしまった。本当の空を見るには、飛行機に乗るしかない。僕が生きてるのはそんな時代。
 かつて日本は、雲に覆われておらず、晴れると青い空が広がっていたこともあったみたい。だけど、気候変動が起きて、日本のみならず、世界中が雲に包まれてしまった。
 本当の青い空を見るには飛行機に乗るしかないんだって。
 でも、うちは貧しくて旅行に行くなんて贅沢はできなかった。ないお金から大学まで行かせてくれた親には感謝している。そんななかで、出た友人からの『海外旅行行こうぜ』という言葉。
 なんでも、たまたまハワイだけは雲に覆われてないんだって。
 僕は、幸い大学にはあまり行かなくて済むくらい単位は取れていたので、どうにかしてバイトをたくさんこなして、友達と旅行に行けるくらいにはためられた。
 そうして、初めて空港へ行って、わくわくそわそわしながらパスポートやら手荷物やらの手続きを済ませて、友達のコネでラウンジに入れてもらってビールを飲み、美味しいカレーを食べて飛行機に乗った。
 離陸する時の体が浮く感覚がなんとも言えなくて、でもそれを友達に言ったらしばらくいじられそうだから言えない。飛行機が浮いて雲の中を飛んで突き抜けた。
 その先の景色に僕は感動した。真っ青な天井ではない。これが本物の空なのだと。
 僕は、しばらく口を開けたまま初めての光景を目にしていた。

10/24/2024, 3:42:59 AM