世界は闇の中にあった。
魔王を倒した勇者は、魔神皇の前に敗れ、四肢をもがれて炎に消えた。
魔王の上位存在である魔神皇に、慈悲など無かった。
人々は魔族に抑圧され、永遠の夜に閉ざされた空から降る隕石によって、街は次々と消えた。
だが、覚悟を決めた人々に守られ育てられていた、勇者の娘が、亡き父の聖剣を手に、魔神皇に立ち向かった。
小娘と侮りおごっていた魔神皇は、少女の渾身の一撃の前に、呆気なく屈した。
闇が去ってゆく。
顔を出し始めた朝日を、人々は抱き合い歓呼と涙で迎え、勇者の娘を心の底から讃えた。
歓声を背に受ける少女は、新たな朝を迎える世界を見て、ぽつり、呟く。
「太陽は、こんなにも美しいのね」
彼女が初めて見る、夜明けであった。
2025/04/28 夜が明けた
4/28/2025, 10:39:42 AM