蘇芳

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あなたとわたしは、とてもよく似ているらしい。
例えば、目鼻口の配置だとか声だとか。
そういえば、固定電話が当たり前だった時、受話器の向こうの人に何度も間違えられた。
あなたが死出の旅路にさしかかったとき、あなたはわたしを、もうこの世にはいないあなたの大好きなお姉さんだと、看護師さんに紹介した。
病気が、あなたの脳を侵食していたから。
でも。そうだね。
時々あなたはわたしの妹のような存在でもあった。
あなたがこの世を去る時、いちばんさいごに残した言葉は「ありがとう」だった。
苦しい息の中、一瞬戻った自我で、必死に伝えてくれた。
ちゃんとわたしをわたしだと、わかって言ってくれた。
うん。わたしこそ、ありがとう。
本当にありがとう。
あなたはあなたの全力で、あなたの家族を最後まで守り続けてくれた。
一年前のあの日から、ただ、それを実感する日々。
あなたはわたしの母。
そして、明日は一年前、あなたを見送った日。

【お題:あなたとわたし】

11/7/2024, 11:28:47 AM