これ以上無いほど退屈な夜には、刹那の楽しみのために何もかも投げ出せる気がした。
"全部くだらないよ。だから二人で逃げ出そうよ"
そんな戯言を言って笑って手を取ってくれる誰かを待ち続けていた。永遠に忘れたくないと思う夜の到来を待って待って待ち続けた。夢ばかり見ていた。夢だけを見ていた。
そうして、気づいた。
そんな夜は来ないこと。
待っていても誰も来ないこと。
そう、待っている必要なんて無かったの。
掴みに行こう。一人でも、楽しいところはきっと楽しい。行きたい場所に行くことに、欲しいものを手に入れることに、何の躊躇も諦めも必要なかった。
そんな当たり前のことに気づいた私は、まだ19で、この世界のどこにでも手を伸ばせる場所にいて、まだ死ぬにも逃げ出すにも足りないほど傷ついていなかった。
刹那でもいい。後悔なんてしない私は。
軽やかに踏み出した右足が、カツンと気持ちの良い音を鳴らした。
4/28/2024, 2:07:07 PM