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目が覚めた時、僕は不思議なカプセルの中にいた。
腕を動かすと、液体がまとわりつく感覚がした。
顔には酸素マスクが装着されていた。
気がつくと、カプセルの前に白衣を着た人物が現れた。
『01』
それが、僕に付けられた名前だった。
やがて体にまとわりついていた液体が足元から流れてゆき、カプセルの扉が開いた。


それから僕は、毎日毎日、白衣を着た人達に歩くことや食べることなど、「普通」の人間の生活を教え込まれた。
その人たちは黒い仮面を被っていて、表情が全く見えなかった。


そして僕は、外の世界に連れ出されるようになった。
とは言っても、必ず誰かが付いてきていて、決められた範囲外には出られないようになっていたのだが。


カプセルの中で目覚めたあの日から3年後。
僕はいわゆる「普通」の人間と同じように生活するようになった。
家は予め用意されていた。
会社に就職し、一人の女性と結婚した。
しかし、何となく察していた。
これは、あの人たち、白衣の人たちに元々用意されていた道なのだと。

ーーそれでも、何も感じなかった。



モニターには、例の01の姿が映し出されていた。
モニターの前には、5人の白衣の人物が並んでいる。
その中には、01の「妻」の役を担っている女も混ざっていた。

5人は無表情でモニターの前から去っていった。
後に残されたのは、1部の報告書。
そこにはこう書かれていた。



ーー実験失敗

・会話、表情に人間味が感じられない
・感情がない



「不完全だったか。」
「ああ。一体何が足りなかったのだろうか。」
「やはり人工人間というのは、難しいな。」
「01は私が処理しておきます。」


こんな会話をしながら、5人の科学者が真っ白い廊下を歩いてゆく。
完璧な人工人間を作るために。
世界を作りかえるために。


01という少年には愛が足りなかった。



             2023/8.31 不完全な僕









8/31/2023, 11:55:40 AM