目が覚めると(同罪)
………頭が痛い。
カーテンの隙間から覗く朝日が眩しい。
がんがんと鳴る今まで体感したことのない頭痛に襲われ、わたしはこめかみを抑えると、のそりとベッドから這い起きた。
暫く何も考えられなかったが、無の数秒が過ぎた後、ようやくああ、と少しばかり記憶が揺り戻された。
えーと。居酒屋で、同僚と日頃の鬱憤を晴らすべく限度崩壊の勢いで飲んでて………、うん。
ああ。見事にその後の記憶も崩壊してしまっている。
余りに不確かなそこからは、一緒にいた同僚に恐る恐る聞き出す羽目になるのだろうが―――いかんせん彼もお酒に飲まれるタイプで、自分と同様どこかで潰れているのではないかとどうにも危ぶんでいる。
………でもまあわたしがこうして自宅に戻っている辺り、彼も足取りがわからないなんてことにはなっていないだろう。
とりあえず何かしら連絡が来ているかも?と、ローテーブルにあったスマホに手を伸ばそうと体を傾けた、その時。
「ううん………、」
は!?
―――ベッドの中で蠢く誰かの気配に、わたしは激しく動揺して声も上げられずそこに硬直した。
「………もう、朝か?」
けだるそうに起き上がった誰かは他でもない同僚の彼その人。
え、何これ。
百歩譲って、というか、全く面識のないどこぞの輩でなかったのは不幸中の幸いであるとしても、………だからってなぜ彼がここにいるの。
酔い潰れたわたしを送って、それで彼も力尽きた?
―――のならば良くはないがよしとはしたい。
けれど、………まさか。
「ねえ大丈夫? あの、どういう経緯でここにいるか教えてくれる?」
「え………」
彼もわたし同様その場に一瞬固まった後、わあぁあ!!と素で面食らい、ベッドから転げるように退くとこれは誤解だと冤罪を叫んだ。
「違う、俺はそんなつもりじゃない!」
「わかってるわよ、泥酔したわたしを送ってくれただけよね? 狼狽えなくてもちゃんと、」
「俺は駄目だって言ったんだ!」
「え」
「お前だけタクシーに乗せるつもりだったのに、離さなかったから! 家の前で帰るつもりだったのに、手を引かれて! それで二人で縺れて、」
―――ここに。
「………」
「………」
………何とも言えない微妙な空気が漂う。
どうにも気まずい中、
一人は無断でベッドになだれ込んでしまったことに
一人は強引に自宅にお持ち帰りしてしまったことに
「………ごめんなさい」
二人して姿勢を正し正面に直ると、同時に相手に向かって頭を下げた。
END.
7/11/2024, 6:15:10 AM