夕暮れの病室に響く泣き声。
その様子に、俺はどんな表情をすればいいのか分からない。
『ごめんね…泣きたいのは君なのに…』
確かに泣きたい気持ちはある。
でもそれ以上に、俺は君に泣いてほしくなかった。
だがベッドに横たわり、呼吸器とたくさんの管に繋がれた
俺に出来ることなんて限られている。
そんな時、看護師が面会時間の終わりを知らせに来た。
君は椅子から立ち上がり、泣き腫らした目を誤魔化すように
明るい声色で“またね”と言った。
目と目は合わなかったが、俺は少ない力を振り絞って
肘から上を上げ、手を振った。
君の背中を完全に見送り、腕を下ろして天井を見上げた。
俺なんかの最期に、君に泣いてほしくないから。
だから、一人きりで、君の知らぬ間に。
「ま、たね…」
かすれ切ったその声は、俺の意識と共に消えていった。
7/31/2023, 2:47:19 PM