手の込んだ手抜きなんて言葉がある。
手を抜くために、それまでの行為に全力で挑む
そんなことをするくらいなら、普通にやった方がいいんじゃない?ってことだ。
幼なじみのあいつは、なりたいものがある。
夏の夜空に花を咲かせる花火師に
「俺はよ、でっけぇ花火を咲かせるんだ」
病院から見えたあの景色を
明日死ぬかもしれないと言われたあの日にみた空を
絶望の縁にいた彼を照らした大輪の花を
今度は自分で作ると言うのだ。
余命宣告受けたあの日以来見せなかったメラメラと宿る活力は花火の轟音と刹那に消える光が灯したのだ。
まるで、燃え尽きる前のロウソクのように
季節は移ろいで、桜の蕾が開き始めた暖かい日
彼の体調は急変した。快調に向かっていたはずの体は病にゆっくりと犯されていたのだ
ひとりで歩くことさえ出来ない彼を無理通して屋上で小さな花火を打ち上げた。
煌めく夜空をより一層輝かせ、まだ肌寒い風が火薬の匂いをかき消した。
彼がこの世を去って15年と少したった今
彼とみた夏の夜空を
彼に生きる希望を与えた煌めきを
彼の輝きに魅せられた私が
「さぁ、でっけぇ花を咲かせよう」
誰かに刹那の輝きを魅せる為に
2/17/2025, 11:18:03 AM