汚水藻野

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 「はあ〜〜〜。」

 今まで感じていた日々のストレスや苛立ち、罪悪感、抑えていたもの……それらが全て文字通り洗い流されるような場所へ来た。

 思わず声が漏れるほど美しさを持つ海だった。

 一歩、一歩と進んでいくうちに、そのうち自分も海の一部になるんだろうか、と、夢のようなことを考える。本当にそうなれたらいいのに。
 人は死ぬと星になる、なんてよく言うが、星は天に近い場所、つまり天国に行くということを身近な自然で例えたものに過ぎない。
 天国に行ける人間、地獄に堕ちる人間と、様々だが。

 多分自分は地獄に堕ちる。

 嘘も付いたし、言ってはいけない言葉も吐いた。人に怒ったこともあるし、無責任に放ったこともある。
 自分のことを「天国に行かせてあげて」なんて言う血のつながらない他人はいないだろう。両親でさえ怪しい。自分は結構親不孝な気がする。

 「……つめた、」

 来いよ来いよと騒ぐようにして、行ったり来たりを繰り返す波。真夏で蝉が甲高く鳴くにも関わらず、海はただ冷たくて気持ちよかった。
 それでも汚れた水だ。豪華な食事が出てきても、まずは手をつけずに観察するのが自分だ。用心深く、疑心暗鬼になるのは生きる上で狡猾になれた。

 「今年の夏は、もういいかな。」

 このまま海に沈みたい。一部になりたい。喰われたい。


 それで最後にしたい。



2025.8.26. 「素足のままで」

夏休みが終わるなんて信じらんねえ。
海も祭りも行けなかったわ。
テストより人間が怖い。

8/26/2025, 5:01:43 PM