「あなたに届けたい」
海のさざめきに乗じて歌を歌っていた。
「歌なんて何の役にも立たない」
窮屈でもどかしくて、心配するふりをして誰も私のことを考えていないこの場所から逃げ出したかったのだ。
「お前を心配してるんだよ」
小さな歌声を消して海は私を遠い街に誘う。
「現実見なさい」
いつかこの場所を出て行ってやるって海に誓って制服のスカーフを海にぶん投げた。
「どうせ成功しないよ」
スカーフはひらひらと頼りなく落ちて波の間に消えた。
「まあ無理だろうけど」
それはまるで今私の目の前を舞っている紙吹雪みたいだった。
「なんでこれまで何もしてこなかったの?」
ああ、海は海でも光の海って本当に存在したんだ。
「今さら遅いんじゃない?」
こんなにあたたかい海があったのか。
「実績つんでから出直してきな」
最前列で涙が見える。
「君才能ないよ」
私は声を張り上げた。
「やってやろうじゃないの!」
1/30/2026, 2:12:54 PM