お父さんがいて、お母さんがいて
君がいて、ボクがいた。
ボクら生まれた時から一緒で
毎日毎日じゃれ合って
最初はね、ふたりとも何も分からない赤ちゃんみたいなもんだった。
だけど、じきにボクの方が君を守らなきゃって思えてきたんだ。
君は危なっかしくフラフラ歩くし
ボクの方が足が速いし。
それがいつしか君はお兄ちゃんみたいになって
ボクは小型犬だから軽々と君に抱きかかえられるようになって
それでもボクは君を守りたかったよ。
痛いことからも辛いことからも君を。
しばらくして
お父さんとお母さんは大きな声でケンカすることが増えた。
悲しい君を慰めたくて
ボクはクンクン君の膝小僧に鼻を押し当てたけど
ずっと一緒にいられると思ってたんだ。
ずっと一緒に。
でもある朝、君はお母さんに連れられていった。
ボクはお父さんとしばらくここに住んでたけど
今度お父さんもこの家を出る事になったよ。
次の家は犬を飼えないんだってさ。
ボクはどうなるか分からないよ。
君に会いたいよ。
君に会いたいよ。
______________________________
【42】君に会いたくて
1/19/2024, 11:30:18 AM