喜村

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 空が真っ赤に燃えていた。きっともうすぐ日が沈む。
 スマートフォンを片手に彼女は駅前の像の前で誰かを待っていた。時刻を見ると夕方五時と表示されている。
「ごめーん、ミナ待った?」
 駅口から、急いだ様子で制服姿のショートヘア女子が走ってくる。手には紙袋が二つ、中身は大量のチョコレートとラッピング用品が見てとれる。
「全然。それよりユウカちゃんから一緒にチョコ作ろうって言われたから何事かと思ったよ」
 ミナは駆け寄ってきたユウカから袋の片方を受け取り、歩みを進めた。
「えへへ、実は最近、恋人ができまして」
 照れ臭そうにユウカは口を開く。夕日のせいか、照れてるせいか、彼女の顔は赤かった。
「そうなの!? おめでとう! だからチョコ作りするのかぁ!」
「ミナも好きな人いるんでしょ?」
 歩きながら目をそらすミナ。ぎこちなく、うん、と伝える。
「僕から告白してオッケーもらったんだ、ミナも待ってるだけじゃなくて、自分からアタックしてみたら?、と、思って誘ってみました」
 ユウカは、へへ、と笑って見せたが
「そう言って、お菓子作りとか未経験だから失敗しないように、ベテランのあたしに声かけたんでしょ?」
 今度はユウカの方が、ぎくりとなり、頷く。ユウカは男勝りで、料理やメイクなどの女っ気がないようだ。
全くもう、と言わんばかりにミナはため息をついたが、彼女は輝く夕日をみて、何かを決めたらしい。
(待っててね、先輩)

【待ってて】
※【伝えたい】の前の話、【この場所で】の後日談

2/13/2023, 12:05:28 PM