月城の散文

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───そう言われて、ロビンフッドは心底驚いた。

その言葉を想像していなかったからではない。
その言葉を、まるで当然のごとく思い描いていた自分に気付いたからだ。

目の前には差し出された手。
自分の荒れた手より幾分小さくて綺麗で、だがそれだけではないと知っている手。
希望を抱きしめ、絶望を抱え込み、それでも前に進むことを、先にある光を、星を、ひたすらに追い求めた手。

自分のように弱いサーヴァントを、旅の初めからずっと連れていく変わり者。
今先程、アーチャーとしての最高位である冠位戦まで付き合って、結局他のアーチャーサーヴァントを差し置いて自分をグランドなんていうものにまでしてしまった大馬鹿野郎。

だがその後に差し出された言葉も手も、まるで予め知っていたかのように───否、無意識のうちにずっと期待していたのだと自覚して、ロビンフッドは深緑のフードを深く被り、赤らんだ頬を隠した。

期待など、していなかった。
期待なんてするはずもなかった。

ここには沢山のサーヴァントがいて、ただリソースのなかった初期からの腐れ縁のようなものだと、いつか、戦力外として忘れ去られる存在なのだと、ばかり。
そう思う傍らで、心のどこかで、片隅で、自分さえ気付かないような砂粒より小さな欠片でも。

この言葉を、ずっと信じていた、なんて。


「……ホント、オタクには敵いませんわ」


差し出された手は引っ込められることなくずっとそこにある。
それは今だけではなく、きっと最初から『そこ』にあった。
ただ、見ないように、気付かないようにしていただけだ。
その手をとった時、いつか振り払われるのが恐ろしくて。


「でも、ま、……ここまでされちゃあ仕方ない」


でも、今は。
もう今は、違う。
この手を取るのに躊躇いはない。
いや、この先でいつか手が離れてもいいとさえ───思う。
だが、それは自分らしい諦めではなく、もっと自分らしい諦めの悪さから来るものだ。


「ええ、それこそ、地獄だろうとなんだろうとお供しますよ」


フードを深く被って表情を隠したまま、ロビンフッドはその手を取り、握り返す。


「……もう離れてやりませんからね、マスター」


──────



捕まったのか、捕まえたのか。
掴まったのか、掴まれたのか。

繋いだ手は、想像していたより温かかった。



──────


ロビンフッド夢「望む未来」
【お題:これからも、ずっと】

4/8/2026, 12:46:22 PM