懐かしい歌が聞こえた。
あの子ではないと知りながら、視線は声の主を求めて彷徨う。遠く駆けていく子供たちの姿に、あの子ではなかったことを認めて肩を落とした。
何度繰り返しただろう。少しも前に進めないことを、自嘲する。馬鹿だと思いながらも、葉の落ちた木々にまたあの子の思い出を重ねて足を止めた。
青々と葉が繁る木々の下、木漏れ日を浴びてうたた寝をするあの子の幻を見る。
瞬きの間に、幻は跡形もなく消える。近づいて、地面に触れても、そこには温もりの欠片も残ってはいない。
「本当に、馬鹿だなぁ」
木漏れ日のような暖かな笑みを浮かべたあの子の跡は、この先も消えはしないのだろう。
すべては自分の選択の結果だ。それなのに今更醜く縋る心に、吐き気がしそうだった。
11/16/2025, 2:11:40 PM