それは、何気ないやり取りがきっかけ。
それは、ただの自分の気分。
広瀬はやっとの思いで帰路につく。
ぼすんとベッドに倒れ込む。
今日は死んだように寝てやろう。そう決心した時ブーっと己のスマホの通知が鳴る。
何用だ。どうでもいい要件だったら速攻ブロックしてやろうと、めちゃくちゃ理不尽なことを考えるくらい広瀬は疲労していた。
だが、その考えは吹っ飛ぶことになる。
「…!海奈ちゃん」
なんと、可愛い可愛い後輩……兼恋人。そんな彼女からの通知なんて見ないなんて選択肢は無い。
「…………?」
だが、メッセージを見ようとするも、トーク画面にはメッセージはない。かわりにひとつの“不在着信”
どうしたのかな。オレ、気づかなかったけど……なにか急用かな。そんなこと考えたら新着メッセージ。
『間違えました』
間違えた?なんだ、そんなもんか。
だけど、広瀬の妄想ワールドが開拓される。
もし海奈が、自分に会いたかったけど忙しいかもしれないと躊躇い結局勢いで掛けてしまったが我に返り誤タップしたことにしたとするならばそれはそれは愛おしいなと。
事実、広瀬の妄想ワールドは間違っていなかった。海奈は間違いなんかじゃなく、故意に掛けたが躊躇いが勝ち誤魔化したのだ。
そう考えるととても胸の高鳴りが押えきれない。上がる口角を隠すように口を抑える。
「……おや、もうどこかへ行くのですか?」
先程帰ってきたばかりだというのに。すれ違った兄に聞かれたが小さく頷いてその場を立つ。
「あー……会いてぇ……」
真っ赤になった顔を隠すため、深く深く帽子をかぶりながら広瀬は海奈の元へ向かった。
1/28/2025, 10:33:08 AM