僕は天涯孤独な人間でした。
親の顔も知らず、物心付いた時から生を疎まれ、いくら傷を付けられようが文句が言えないお荷物としての人生を、歩んでいました。
友も居た覚えはありませんが、それよりも、僕は家族という物に強い憧れを抱いていました。
おかえり、と声をかけてくれる人間を、切望していたのです。
温かい手料理、心地好い家庭、そう言った物に憧れていたのです。
必死に学を身に付けました。いっぱしの人間になる為に。
必死に働きました。夢を掴む為に。
家族なんて存在を得るために、そこまで努力する必要が無いだろうと笑う人間は、きっと大層恵まれた人生だったのでしょう。
血の滲むような努力の末。
僕に妻が出来ました。
素朴な人柄で、誰に対しても公平。きっと、この人となら幸せを築ける。
妻と出会ってからは、冷たかった人生に、温もりが生まれました。
僕はようやく幸せを手にしました。僕にとって妻は、世界に一つだけの宝物なのです。
『世界に一つだけ』
9/10/2024, 8:26:37 AM