紅茶の香りなんて分からない。
何が良い匂いかとか、茶葉ごとの違いとか、
アッサムとかスリランカとか言われても分かんない。
午後ティーとリプトンなんて、どう違うの?
味だって、砂糖やミルクを入れるんだから分かんない。
「そうかな? それでも興味を持って味わえば、違いは感じ取れるよ」
彼氏が、紅茶をスプーンでかき回しながら言う。だから私は反論する。
些細な違いなんて、お腹に入ればみんな一緒。
舌の上で感じ取れる一瞬に、違いなんて分からない。
そもそも別の紅茶の味なんて、覚えていない。
「そっか。興味ないものの違いは分からないんだね」
彼氏が、飲み終わったカップをソーサーに置く。
カチャンと、陶器同士がぶつかり、耳の奥に突き刺さるような甲高い音を立てる。
「本当は僕のことに興味がないから気づかなかったんだね」
何を、と問うと彼氏が、嗤う。
「あの夜、君を抱いたのが、僕の双子の弟だったってこと」
10/27/2024, 12:54:30 PM