池上さゆり

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 まっすぐな目で、汚れの知らない心で、力のこもった声で愛を叫ぶ彼が気持ち悪かった。
 だけど、一人で過ごすことに限界を迎えていた私はそれを受け入れた。私の方が十歳も年上だ。バツイチで年長の子どももいる。それでもいい。私の苦しみを半分だけでも分けてほしいという言葉に縋るしかなかった。

「きっとあんたは、寂しさが限界に達したとき傍にいてくれる人を選ばないよ」

 親友から言われた言葉を当時は否定していた。だって、実際に一人でも子どもは育ってくれた。だけど、初婚のときに旦那の地元に引っ越ししたせいで、頼れる人が周囲にいなかった。離婚したせいで両親との関係も悪くなって実家も頼れなかった。独りの時間を誤魔化そうと、服飾の経験を活かして子どもの服を作り続けた。それでも埋まらない心に苦しめられている中、現れたのが彼だった。
 すぐに同棲を始めて、彼と子どもが仲良くなるように頑張った。お互い人見知りしていたけど、時間が解決して今では彼の膝に子どもが自ら座りに行くようになった。夜の時間だって、久々に感じる人のぬくもりに不覚にも泣いてしまった。愛される幸せを思い出した。

 親友の言っていたことは本当だった。愛されているだけで日々の生活に自信が持てる。自分という存在を肯定できる。ただの都合のいいパートナーにでもなってくれればと思っていたのに、今では彼と子どもが世界一愛おしい。

5/11/2023, 10:39:01 AM