遅刻魔の彼女を待っている。
もう、約束の時間を20分過ぎている。
まあ……いつものことか。
駅の改札前。
通る人の邪魔にならぬよう、端っこに除けて、君を待つ。
見回すと、自分と同じように待ち人が来るのを待っている人が何人かいる。
遅刻魔ってのは市民権を得てるのかな。
まあ、今日たまたま電車が遅延してるのかもしれない。
遅刻魔と決めつけるのは良くないな。
でも、彼女は来ない。
雨が降り出した。
窓の外に暗雲が広がっている。
待ち人が現れた人達はその場を後にして、嬉しそうに喋りながら去ってゆく。
僕は、この場所から動くことが出来ないまま。
まだ、彼女は来ない。
スマホを取り出して、メッセージを確認する。
「今日は、行けないかもしれない」
彼女からのメッセージ。
僕は返事を打ち込んで送信する。
「いつまでだって待ってるよ」
きっと、彼女は来ない。
遠く、雷鳴が聞こえる。
気付けば、改札には自分以外に誰もいない。
待ち合わせをしていた人達の願いは叶えられたのだろうか。
僕の願いを託した彼女は、きっとまだここに向かう途中だろう。
辿り着けるだろうか。
僕達の暗い過去を振り切って。
電車のブレーキ音。
まもなく、たくさんの人達がこの改札を通り過ぎる。
その端っこで待つ僕は、きっと誰の目にも映ってはいない。
そしてまた、僕の待ち人である君も同じ。
誰の目にも見えやしない。
もう、彼女を待ち続けて6時間。
改札の向こうに、君がいた。
遅刻魔という魔性の存在。
忙しく行き交う人達が君の体を素通りしてゆく。
「ごめんね。待った?」
君の笑顔は相変わらず可愛らしい。
だから僕は、見え透いた嘘をつく。
「待ってないよ。僕はずっとここにいるだけだから」
雷鳴が轟いて、駅の照明がチカチカと瞬いた。
2/13/2026, 2:48:57 PM