暗がりの中で、彼女は笑った。
こちらを嘲笑うかのような薄笑い。
喪服のような格好をしているせいで、白い肌が闇に浮いて見える。まるで幽霊のようだ。
しばらく向かい合っていたが、やがて彼女はくるりと身を翻した。
そのまま、闇に溶けて見えなくなった。
目が覚めて最初にうつったのは、自宅の天井だった。
午前7時、青い空、すずめの声。いつもの朝だが、雨に打たれた後のように全身が汗でびしょ濡れである。
アレは何だったのだろう。
しかし、訳もわからぬ不安は、お袋の「朝ごはんよ」の声に掻き消された。
登校中、車道を挟んだ向こう側に、黒い影を見た。
ヒュッと喉が鳴る。
ドッと汗が吹き出す。
青ざめるとはまさにこの事だ。
見間違いでなければ、夢の中の彼女ではないか。
俺は思わず、彼女の方へと歩みを寄せる。
突然、横から耳をつんざくような音が響く。
次の瞬間には体が宙を舞っていた。
最期に見た彼女は夢の中と同じように、
こちらを嘲笑うような薄笑いを浮かべていた。
10/29/2024, 7:14:28 AM