【夜景】
やっぱり、こんなオシャレなホテルでプロポーズなんて僕には場違いだっただろうか。
目の前の彼女は、俯いたまま、何も言わない。
普段は、そこらのファミレスに行ったり、テーマパークに行ったりと、なかなか庶民派な僕達だが、意外とこれが最高に楽しかったりする。
高校の頃に出会って、告白したのは彼女からで(結構男前な彼女なのだ)、そこから付き合い始めて6年目になる僕達。
そんな僕達は、度々、元同級生の結婚式に参加したりする。数年ぶりに会って、綺麗になってる花嫁を見て、彼女がぽやーと眺めているのを目撃した。
あぁ、僕達もいつか結婚とかしちゃったりするのだろうか、と考えると、やっぱりプロポーズって男からだよな、とか、彼女のことを思うと、早い方がいいのかなとか思った。
そんなこんなで、今日のプロポーズの計画を立てたのである。
付き合い始めた記念日の今日は、タイミング的にもなかなか良かったと思う。
「えーっと、その、聞こえてた?もう1回言う?」
現実逃避をしても仕方がないと思い、彼女に話しかける。
「あのー、、すみません?えっと、その、迷惑、だった?」
唐突に彼女が顔を上げた。その顔は、びっくりするくらいボロボロに泣いている。
「っっ……、もう……、こんな綺麗なホテルに来ちゃって、記念日だから嬉しくて、それだけで十分すぎるくらい幸せなのに……っ、でも、しかも、ぷ、プロポーズって……!」
あ、これは嬉し泣きってやつだ。
「ふふ、あはは!」
「ふへへ、あは。」
2人して笑う。
「じゃあ、返事って……、」
「っっ……、もちろん……っ、これからもこんな私で良ければよろしくお願いします……!」
「ねぇ、さっきの指輪はめてもいい?」
そう言って笑う彼女は世界中の何よりも綺麗だと思った。
9/18/2023, 12:19:01 PM